日本海に面した富山県滑川市。水面には青白く光るホタルイカが浮かび、次々と漁師の網に掛かっていく。富山湾はホタルイカ群雄海面として、国の特別天然記念物にも指定されているほど。市内ではホタルイカにちなんだイベントが盛りだくさん!街のホタルイカへの愛情が伝わってきますね。
カネツル砂子商店はそんな絶品のホタルイカを使って、創業から110年間、加工に携わっています。全て富山県産のものを使用し、スタッフの手で1杯ずつ厳選しているのだとか。看板商品の「ほたるいかの活漬け」はホタルイカを生きたまま醤油に漬け込んで作ります。よく流通している沖漬けは冷凍したものを調理することがほとんど。活漬けはカネツル砂子商店の特別な製法で作られる、特に珍しい製品です。1杯口に入れてみると白米がどんどん進む。醤油は肝までにも染みわたり、濃厚な味が口に広がっていく。これはやみつきになりそうです。
取締役の砂子典章さんにお店のこだわりや想いをお伺いしました。
Q.富山県産へのこだわりについて、何か特別な理由があるのでしょうか。
「富山のホタルイカで勝負したい」という強い気持ちを持っているからだと思います。私たちは活漬け以外に、塩辛や沖漬けでも富山湾産を使用しています。さらには、裏年と言って漁獲量が少ない時にも敢えて地場産を使い続けています。
富山県のホタルイカは9割が市場に売られています。富山県産は他県と比べて、どの市場でも高い評価を受け続けているんです。高い評価をいただく理由の1つに、定置網漁という漁の方法があると思います。これはホタルイカに傷をつけることが少ないものなんですね。また、漁場と港の距離が小さいため、抜群の鮮度を保つことができます。特に産卵期のホタルイカは栄養価が高いです。お客さんにも、ぷりぷりで美味しいものが提供できるんです。
Q.商品名に「活漬け」と「沖漬け」があります。これはどういった違いなんでしょう?
「活漬け」は生きたホタルイカをそのまま醤油に漬けるもので、「沖漬け」は一度冷凍してから漬けるものです。活漬けは弾けるような弾力があり、食感が大きく変わるんですね。
活漬けは私がイカを選定するために、弊社で船を出して漁船に横付けしています。生け捕りのホタルイカを海洋深層水ごと持ち帰り、工場で素早く醤油に漬けます。活漬けならではの食感を保つためにも、1日ほど漬けてすぐに製品化します。
これは先代が差別化したいと思い、作り出した商品なんです。また、『美味しんぼ』の作者が当社に取材しに来たことも開発の1つのきっかけだったり。先代は取材を受ける中で無添加などのアイデアが広がり始めたようです。そこからパッケージも少しずつ変えながら、お客さんの手に届いています。
Q.現在の味にたどり着くまでに難しかったことはありますか?
醤油の選定や分量・鮮度の保ち方です。活漬けはホタルイカが生きたままの状態なので、醤油の吸い込みやすさも変わってくるんです。皮膚から浸透することもあり、吸い込みすぎるとあまりにもしょっぱくなってしまいます。また、漬け込む期間も試行錯誤を重ねましたね。3~4日もイカを漬けると、食感があまりにも悪くなります。
Q デザイン性のあるパッケージに活漬けのイメージが思わず変わったような気がしました。
このこだわりはどんなものなんでしょう?
ホタルイカの土産って渋いでしょ?パッケージをきっかけに商品を手に取る人が増えると良いなと思っています。試食が無い販売場所でパッケージが普通のものだと、売れないことに気が付きました。「味が良いから買ってくれる」というような考え方は通じないんです。
そこで、今までこだわっていなかったパッケージを変えることにしました。デザイナーさんに依頼し、20~30代の女性もおつまみを食べたいと思った時にフラッと手に取れるようなものを作りました。そしてそれを人にも贈りたくなるものにしたいと思っています。娘さんがお父さんへのプレゼントとして贈ったり、結婚式の引き出物にも使っていただけたりと、贈り物としても活用できるようにパッケージを変えました。
Q.砂子さんが大切にしている想いはありますか?
「当たり前」を発信していくことです。どんな人の手で作られているのかを伝えることで、お客さんも安心できると思うからです。お客さんに商品を提供し続ける以上は、安心して手に取っていただきたい。私たちが自社サイトで更新しているブログも、そういった想いから始めるようになりました。作り手の顔が伝えられていると嬉しいですね。
また、「富山県産のホタルイカ」の本当の美味しさを広めたいと思っています。富山のホタルイカは他県とは全く違います。身も大きいし単価も高い。そのためにいくつかの取り組みを実施しています。まずは、ホタルイカミュージアムでのテナント出店です。これは「進化する漁師バル」をコンセプトに、一般のお客さんとの繋がりを大切にしているものです。ここでは、獲れたてたてのホタルイカをしゃぶしゃぶセットで提供しています。地元の子どもたちに向けては、来年に加工場の見学を予定しています。滑川のホタルイカに誇りを持つ子どもが増えていって欲しいですね。
本社を出て数秒歩くと目の前に富山湾が見えてきます。ホタルイカとの距離もここまで近かったとは。全国各地から注目を集めているため、ホタルイカたちもきっと喜んでいるでしょう。地元の良さを最大限に活かした一品をぜひ召し上がってみては?
【基本情報】
カネツル砂子商店
URL: https://kanetsuru.com/shop
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