「美味しい・新しい・珍しい」をモットーに地域に根差した商品開発と新しい企画を生み、山梨県南アルプス市の活性化と魅力発信、町おこしを行っている「燻製屋 響」。
山梨県富士川町にて育てられた高級やまめを贅沢に1匹使用した燻製など、山梨から新たな特産品を誕生させるために発信を続けています。商品誕生の想いについて代表の手塚健斗さんにお話を伺いました。
Q.山梨へUターンされたきっかけは何ですか?
結婚後、自然豊かな場所で子供達が楽しく遊んでる姿を見ているうちに、勉強は何処にいても出来るけれど自然の豊かさは都会ではなかなか体験できないと思い、地元山梨で子育てをしたいと戻って来ました。実際に住んでみると東京には無かった地域の繋がりや人の温かさを感じます。また水や食材が豊かで美味しいところに魅力を感じています。
Q.燻製屋を始めようとしたのは、何がきっかけになったのでしょう?
子供に誇れる仕事をしたいと思い、山梨を代表するものづくりに携わりたいと考えていました。
個人店が少なくチェーンの飲食店ばかりなのでどこに行ってもだいたい同じ様なおつまみメニューばかりで、寂しいなあと思ったのがきっかけです。
山梨県の特産品は果物や信玄餅等の他、あわびの煮貝や鳥もつ煮がありますが、日本酒や焼酎には合うけれど、山梨の特産であるワインには合いません。某有名飲料会社のウイスキー工場が有るのにウイスキーに合うおつまみも有りません。ワインやウイスキーに合うおつまみとして、山梨の素材を使って新しい特産品を作りたいと思い燻製に辿り着きました。
Q.素材はどの様にして選ばれたのですか?
色々な農家さんに直接お話を聞いて、決めるようにしています。
やまめはどうしても「忍沢養殖場」のものを使用したかったのですが、最初の頃は半年くらい「燻製屋なんて知らん!」と何度も断られていました。「まず10匹だけでも売ってください」とどうして忍沢養殖場のやまめが良いのか、何度か試作品も持って足を運び説得するうちに卸してもらえる事になりました。そしたら「売ってやるからもう来るな。」と言ってもらえました。粘りがちですね。(笑)
どこもはじめは受け入れてもらえないのですが、「この素材を燻製にするとこんなに美味しいんです!」と熱量を伝えることで地域の方々に受け入れてもらえました。
Q.忍沢養殖場のやまめはどんな違いがあるのでしょうか?
他の養殖場では湧き水を使用している所が多いのですが、湧き水は水の温度が一定なので育つのが早い分、病気になりやすくなります(いわゆる温室育ち)。「忍沢養殖場」は川から直接水を引いてきているので水が冷たく、池の中に流れがあるので太りすぎておらず身のしまりが良く、脂のノリも良いのです。
Q.燻製チップのこだわりはありますか?
収穫が終わった農家さんが剪定した枝をチップにしています。廃棄予定の枝を買い取って再利用し循環させる事が出来るのでSDGsの取り組みにもなっていると思います。桜をベースに、さくらんぼやぶどう、りんご、もも等の枝を使用しているのですが、それぞれ香りが渋くなったり、燻製臭が和らいだりと特徴があるので使う食材ごとに燻製チップを変えています。ゆくゆくはチップ自体も発売し、冬は収入が減ってしまう農家さんに還元できればと思っています。
Q.商品を作りにおいてこだわりはありますか?
出来るだけ国産の材料を使用したいので、ミックスナッツ以外は全部国産の材料を使用しています。その中でもなるべく県内のものを使用していきたいと思っています。また、素材の味を活かしたいので保存料や添加物は一切使用していません。無添加で加工することを大切にし、保存方法を伸ばす為にどういう保存方法が良いのか日々工夫しています。
Q.地域の方と繋がっていく中で面白さはありますか?
「こんな事をしている人がいたんだ!」と感じる様な面白い方に沢山出会うことが出来ています。
豆腐に関しては、「豆腐を燻製にして欲しい」という持ち込み企画でした。滑らかな食感は絹豆腐が良いのですが、水分量が多く崩れやすいので、丁度良い塩梅にするのにかなり試行錯誤しました。
豆腐は地下の雪解け水を使っていて口のなかでスッとなくなる味わいで、豆腐そのものがとても美味しく、全国大会に出場してみてはと提案した所なんと入賞。「うちの豆腐はそんなに美味しい豆腐だったのか」と豆腐屋さんの自信にも繋がりました。
燻製チップの流れで農家さんから余ってるフルーツを使って欲しいとの依頼がありドライフルーツにして燻製にしたり。自分が造り手になって初めて地域の魅力を実感するようになりました。
Q.燻製というとおつまみのイメージですが、おつまみ以外にも展開していきますか?
湯葉チップという湯葉を乾燥、味付けてして燻製している商品があるのですが、子供も美味しいといって食べてくれます。変わり種の燻製としておつまみだけでなくお茶請けにもなりうる商品は今後も展開していきたいです。当店の燻製ミックスナッツを砕いてあんこに混ぜてどらやきの具材に使って下さっているお店もあります。燻製の可能性が広がっていくのは嬉しいですね。
最近は「ワインに合うチョコレートのおつまみを作りたい」とご依頼頂きチョコレートの燻製を試作中で10月頃には商品化出来そうです。
手塚さんが「地域の名産を作りたい!」と情熱を持って作る燻製の数々は、ふわっと鼻から抜ける燻製の香ばしさ、それぞれの素材の味が引き立つ味わいに愛情すら感じます。手塚さんの情熱と実直さをもって少しずつ信頼と評価を得てきているのが伝わってきます。現在では県外への出店や販売依頼も来るようになったそう。オンラインショップでも販売しているので、お家で晩酌のお供に山梨のおつまみはいかがでしょうか?
【基本情報】
燻製屋 響
URL:https://kunseiya-hibiki.storeinfo.jp/
Comments