鈴鹿山脈が聳え立つ滋賀県甲賀市に蔵を構える笑四季酒造は全量純米酒を醸す蔵です。目指すのは「美味しくて新しい日本酒のカタチ」。それは自由な酒質設計にも如実に現れています。杜氏を務める竹島充修(あつのり)さんがこれまでに発表した貴醸酒「モンスーン」や能面が描かれた印象的なラベルの「センセーション」は、「笑四季」の名を一気に全国区へ押し上げました。
竹島さんは、新潟出身。県内の酒蔵に勤めたのち、笑四季酒造に入社しました。当時、環境が整っていない酒蔵に驚きつつも、逆境をチャンスだと考え新体制にしました。「合理的な機械化ではなく、あえて昔ながらの手作業に戻しました。生酛は機械に出来ない菌のコントロールが重要になる手法です。同時に土地の気候や蔵の製造方法で味が大きく変化し、酒蔵独自のアイデンティティを強く出せる可能性があると考えました」。
手作業で酒造りを行う制度を整えたので、2012年からは純米1本に絞り、こだわり続けています。
甘味を軸に据えて商品ラインナップも一新。気軽に楽しむことができるコンテンポラリーシリーズ、米の甘味を極限まで追求した独自設計の貴醸酒「モンスーンシリーズ」、実験的手法の「マスターピースシリーズ」の3つの柱のもと、それぞれで独自性のある酒を生み出しています。
注目すべきは全て精米歩合(日本酒を造る過程で米を削る割合)は50%で統一していること。精米歩合50%は純米大吟醸並みの規格になりますが、醸造アルコールを入れない無添加の状態で作ることで米の綺麗な旨みを楽しむことができます。また、飲み手にとっても米や酵母の組み合わせを変えた商品の変化を感じやすくなっています。
さらりと楽しむというタイプのお酒ではなく、好きな人がじっくり楽しめるお酒ではないでしょうか。
新しいチャレンジ酒として6号酵母から派生して採取された620酵母を使用した「新生INTENSE」を販売しました。長年に渡る6号酵母の特性と生酛研究の集大成とも言え、笑四季酒造にしか現存しない酵母です。黒いボトルにフルーツの絵が浮かぶポップで斬新なデザインの通り、桃や蒲萄の鮮やかな香りがする酵母ですが、扱いを間違えば玉ねぎ臭のような硫化臭に転じてしまうこともあるのだそうです。醪を上手く調整し、香りを損なうことなく酵母由来の果実の香りを存分に活かしました。
フルーツの香りに誘われて口に運ぶと、清涼な味の後に緻密な甘みや酸味が広がりさまざまなフレーバーが口の中で心地よく広がります。この複雑さからも単に「フレッシュで飲みやすい酒」で終わらない酒蔵らしさが味わえるのです。
滋賀県の米農家は農業機械普及率が全国で1位で、合理化を進めた結果、熱意ある米農家が減ってしまった経緯があります。また他県のJAでは買取とならない品質のものでも買取率が100%で競争率が低く品質向上に消極的です。酒蔵では良質な米を選ぶことはもちろんのこと、二次産業の生産者として課題意識を人一倍感じていると言います。
「私達が求める笑四季酒造らしい酒に行くまでまだまだ発展途上と考えている。生酛を更に洗練し、原料である米を追求し、いつかは自社米を作り米作りから携わりたい」と竹島さん。
挑戦からこそ生み出された、口に含んだ時に思わず笑みがこぼれるような笑四季酒造の酒を味わってみませんか。
【基本情報】
笑四季酒造株式会社
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